2年ぶりのハプニングを3月13日(土)、14日(日)の2日間開催した。初日は雨天となり、常磐公園で行われる予定だった大道芸系プログラム「常磐公園トラベリング・カーニバル」が中止となった。またツアーパフォーマンス「The Carnival 獣害リサーチプロジェクト」のダンスパートも常磐公園を上演場所としていたので、そこに到るまでのツアーも変更し、屋内(CCC1階展示、2階交流ホール)で開催した。
人宿町やどりぎ座で行われた熊谷拓明のダンス劇「ひどく晴れた静岡で」でプログラムの幕が開いた。初日は昼と夜の2公演開催。彼と地元ミュージシャン佐々木優樹の二人舞台。佐々木の即興的なギター演奏や楽曲が熊谷の言葉と踊りに重なり物語に起伏と振り幅を与える。熊谷が今回モチーフにしたのはこの界隈のランドマーク的存在だった「静岡オリオン座」にまつわる話だ。この界隈でお店を営む個人経営者にインタビューをして、それをもとに脚本を作り上演。東京に住む熊谷がその方達に成り代わり思い出を話すことによって、私たちが気づかなかった静岡に光が射される。一昨年から創作で度々来静している熊谷は、その中で出会った人々から「静岡愛」を受け取ったという。店主たちと熊谷自身のそれぞれの静岡は舞台に映し出された映像がオーバーラップするように自由により豊かに重なり合う。
その静岡を照らす光は時として深い影を生むだろう。だが、熊谷はそれさえも肯定しありのままの日常の”かけがえのなさ”をさりげなく踊った。
14時から始まった『The Carnival – 獣害リサーチプロジェクト』は移動しながら観劇するツアーパフォーマンスと展覧会が組み合わされたプログラム。体験後の参加者からは多くのお褒めの言葉を頂いたが、開始までは内容が予想できずに少し困惑気味であった。しかし、それはより新鮮な体験となる可能性を秘めているということだろう。「パフォーマンス」は舞台の上だけで起こらないことは「ハプニング」の前提なのだ。このプログラムを上演したことで、多彩なアーティスト、パフォーマー、研究者との協働がこうした可能性を広げていくことが実感できた。 あいにくの雨模様が内容の一部変更を強いたが、それでも充実した内容となったのは、出演者のクオリティを反映していたことに間違いない。
19時から2公演目のダンス劇『ひどく晴れた静岡で』を上演。土曜日の夜ということもあったのか、熊谷の艶話に会場が沸く。佐々木も台詞を与えられ店主に代わり言葉を発するのだが、奇をてらうことなくあくまで自然体で発するところに好感も持てる。2回目ということでお互いへの理解が深まり手加減なしのセッションが舞台上で繰り広げられた。
初日の最後の演目は上演ではなく講義であった。舞踊評論家として活躍中の乗越たかお氏が講師となって「140文字レビュー講座!」を開講。開催時間が遅いことや荒天が続いたこともあって参加者は8名のみと数字的には寂しいが、内容的にはとても盛り上がり充実した学びの時間となった。本日上演した2作品からSNS投稿用のレビューを書いてみるという内容。乗越氏は、自分の気持ちを全面に押し出すのは良いが、「感激」と「感動」を区別し、客観性を大切に勢いだけでなくその気持ちが届く言葉をしっかりと探すことの大切さを伝えていた。「書く」ことを意識することによって「見る」ことを意識していく。気持ちを客観的に眺めることで、舞台の眺め方もまた違ってくる。参加者は早く次の舞台が観たくなったのではないだろうか。書くことの可能性を感じさせる講座に一同満足し、初日の全プログラムは終了した。